生きものの命はだれのものか。
それは命を傷つけようとする人のものではない。
命を育もう、いたわろうとする人のものなのだよ。
『仏典童話』渡辺愛子-文(東本願寺出版)
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悲しいことに、外出自粛の影響により、世界中で子どもへの虐待や家庭内でのDVが増えているようです。逃げ場のないなかで、どんなにつらい思いをしていることだろうと、ニュースを見るたびに胸が塞ぎますが、それと同時にいつも「いのちは誰のものか」という言葉が胸に甦ってきます。
お釈迦様の前生譚ジャータカ物語『白い鳥』には、翼を傷つけられた白い小鳥を見つけた少年と、小鳥に石を投げて打ち落とした少年が、この小鳥はどちらのものなのかと言い争う場面が描かれています。
今にも息絶えそうな小鳥を前に、少女が森の奥から老人を連れてきます。老人は優しい瞳と厳かな声をもって子どもたちにこう告げました。
「生きもののいのちはだれのものか。それは命を傷つけようととする人のものではない。命を育もう、いたわろうとする人のものなのだよ」
人はなぜ命を傷つけてしまうのか、それはきっと人間が様々な欲望を持っていることに加え、自らの内に癒すことのできない痛み、苦しみ、悲しみを抱えているからではないかと感じています。他の命を傷つける、自分の命を傷つける生き方から、命を育む、いたわるという生き方へ、そのような生き方は自分の命を本当に大切にすることから始まっていくように思います。